母材に対する注意事項
母材の材質
PVDコーティングは高真空中でのプロセスのため、鉛(Pb)や亜鉛(Zn)、一部のプラスチックなど200℃で蒸気圧の高い成分が母材中に含まれていたり、鋳物など空孔が多くガスが抜けきらない材質では、処理チャンバー内が汚染されるためコーティングができません。特殊な材質の場合はあらかじめお問い合わせください。母材の表面粗さ
表面粗さが小さいほどスクラッチ試験臨界荷重値は高くなり、被膜の損傷(欠け等)は起きにくくなります。通常算術平均粗さRa0.8μm以下に仕上げることが推奨されます。特に凝着防止目的の場合は鏡面仕上げが有効です。ただしプラスチック・ゴム・ダイキャスト金型ではシボ加工やブラスト加工は離型性向上に有効な手段です。PVDコーティングは、下地の表面形態がそのままコーティング表面に反映されることに注意してください。めっきのようなレベリング効果はありません。一般に大きな切削条痕は母材として適しません。

母材の硬さ
母材表面の硬度アップはコーティング被膜の耐久性向上に有効です(窒化との複合処理等)。通常母材硬さ50HRC以上が推奨されます。テープガイドなど軽負荷用途では、アルミ合金母材や無電解Niめっきなども使用可能です。
母材表面の清浄度
PVDコーティングで強い密着力を得るためには、成膜前の表面が清浄でなければなりません。金属の場合は、酸化層や汚染層のない新生な表面を作る必要があります。以下に各工程における注意点を挙げます。前洗浄 ↓ | 研削ヤケ(酸化層)、洗浄残渣、乾燥しみ、異物付着、バリなどが無いこと |
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ロー付け品、焼きばめ品、組み立て品の場合ガス放出対策必要
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熱処理焼戻し温度を超えないこと。母材の熱膨張係数、熱容量を考慮
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イオンエッチングによる表面安定(酸化)層除去、過剰なエッチングによる表面荒れ注意
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製品の保持方法、回転方法が重要、被膜要求面に最適特性の被膜を成膜する
熱容量の大きいものほど時間がかかる